滑翔
滑翔、すなわちソアリングはグライダーにとっての醍醐味です。
何時間も空に浮いている。時には、何百キロも遠く離れた所へ行ってきたりする。上昇するためのエネルギーを持たないグライダーが、そういう不思議なことができるのは、上昇気流という存在のおかげです。上昇気流を捕まえて空高く飛翔し、獲得した高さを移動するためのエネルギーに変換して空を滑る。これが滑翔、つまりソアリングです。
国語辞典によれば、滑翔とは、鳥が羽ばたきをとめて空を飛ぶこと、という意味です。羽ばたかないグライダーが、上昇気流を捕まえて舞い上がり、次の上昇気流を求めて滑空する。そんな姿にピッタリだからこそ、滑翔という言葉がグライダーにも良く似合うのです。
もちろん、上昇気流は目に見えない空気の流れですから、簡単に捕まえることはできません。上昇気流が発生する時間帯や場所も最初は良くわかりませんし、上昇気流に遭遇したとしても、練習を始めたばかりの人には、それが上昇気流だとわからずに逃してしまうこともあるでしょう。
しかし滑翔している鳥だって、始めから上手く飛べたわけではないように、誰だって最初から上手く上昇気流を捕まえられるわけではありません。空という環境で暮らしていない人間にとっては、まずその環境に馴れることから始めなければなりませんが、知恵と知識という大きな武器があります。先人達の経験を学び、巧みに処理することによって、鳥さえもが驚くような性能をグライダーは発揮し、長く、高く、遠くに飛べるようになるのです。
自分の知識と知恵次第で、同じグライダーでも別モノになってしまう。そこに大きなスポーツ性があり、それゆえソアリングは面白いのです。