野外飛行
野外飛行とはクロスカントリーフライトのことです。クロスカントリーフライトだと長いので、ただ単にクロスカントリーと呼んだり、さらに略してクロカンなどと呼んだりもします。
クロスカントリーは英語で"cross-country"と綴りますが、舗装されていない山や野を越えて走る競技である、"cross-country running"が、スキーや飛行機にも転じて用いられるようになったようです。"Cross"を"X"と置き換えて"XC"と表記するのも良く見かけます。
グライダーでクロスカントリーという場合、飛び立った飛行場や滑空場の周辺を飛行して帰ってくるのではなく、その外へと野や山を越えて長距離の飛行をすることを指します。野外飛行と言われるとちょっとわかりにくいですが、そのような意味があるのです。
上昇気流以外にエネルギーのないグライダーですから、飛び立った地を離れて外へと出かけ、さらに野や山を越えて長距離の飛行をするのは、それなりに大変なことです。特に日本の場合、国は狭いのに人は多いし、山や森や家ばっかりで、グライダーが上昇気流を見失って着陸しようとするときに、降りる場所が少ないという欠点もあります。また、四方を海に囲まれているので、上昇気流が大陸ほどには強くならない、と言った印象もあるようです。
しかし人間とは欲深い生き物です。始めのうちは空に上がることだけで満足していた人間も、だんだんとそれだけでは満足しなくなり、長く飛んでいたいと思うようになります。そのうち、ただ浮かんでいるだけでは物足りなくなって、遠くへ行ってみたいと思うようになります。自転車に乗り始めた子供がサイクリングに出掛けたくなるように、車に乗り始めた大人がドライブに出掛けたくなるように、人が見知らぬ土地への旅行へ行きたくなるように、グライダーに乗ったパイロットはクロスカントリーに出たくなるのです。
その欲望が、グライダーを流線形へと変化させて翼を長くし、数々の長距離飛行記録を作ってきました。日本国内でも、1000kmを越える記録が達成されていますし、海外では3000km以上の飛行記録も出ています。
もちろん冒険の域に達したような新記録を塗り替えなくとも、自らの記録を更新するだけでも面白いのは言うまでもありません。今日はこの町の上まで行けた、じゃあ今度はあの山の上まで行ってみたい。上昇気流という制約があるからこそ、遠くへ行くという行為自体に困難さが伴ない、逆に魅力が高まっているのです。